春先になると、体の調子が悪くなるという方も多いのではないでしょうか?
新学期、就職、転勤、etc・・・。 環境が大きく変化することによって張り切る反面、緊張やストレスを感じる人も多いのではないでしょうか? 
 そんな時、痛くなるのが『胃』ではないのでしょうか? 今回のトピックスでは、『胃』の働きと丈夫な『胃』を作るためのアドバイスを特集します。


ストレスがなくなれば、胃の不快感の大半が解消するといわれています。でも、簡単になくせないものですし、性格が変えられるわけでもありません。それよりも、具体的に行動して、胃をより丈夫にするばうが効果的です。

胃の不快感と現代人は切っても切れない間係で、不規期な生活、偏った食生活、つねにさらされるストレスなど、胃は敵の包囲網に囲まれて、まさに青息吐息といった状態といっても過言ではありません。こうした過酷ともいえる状況の中で胃は悲鴫をあげているわけですが、胃とはそれほど弱いものなのでしょうか?


胃に分泌されるのは強烈な塩酸。

まず、胃のブロフィールを簡単にご紹介することにしましょう。胃が食物を消化して、それがやがて血や肉になるということは、経験的に古くから知られていました。とはいえ、18世紀の半ばまでは、胃は石臼のようなもので、食べものをすりつぶしてドロドロにすると考えられてきました。この考え方に一大転換期が訪れたのは19世紀の初めのこと。バーモントという医師が、けがによって腹壁から胃にかけて穴のあいてしまった患者で行った実験によってです。この患者の胃からは、ときどきすっぱい液が出てくることがわかり、消化が単なるすりつぶしではなく化学変化によるものであることが証明されました。
 いま、私たちの胃は、1日に2〜3リットルもの胃液を分泌していることがわかっています。胃液は、健康であるなら、胃に食べものがない状態では見ることができません。
 それでは、胃液はどのように分泌されるのかというと、胃の中に食物が入ってくると、それまではひだ状だった胃壁が伸び、その刺激でガストリンと呼ぱれるポルモンが分泌されます。その刺激で胃液が分泌して消化活動を始めるというわけです。
 胃液の主な成分は、たんぱく質を消化する酵素であるペブシン、食物を殺菌をすると同時にペプシンを活性化させる働きのある胃酸の2種類です。胃酸は強い酸性を示す塩酸が主成分で、若い人であれぱpHl−2(中性はpH7)ともいわれています。実はこれぽど強い危険物を体内に持っていることが、胃の不快感の大きな原因になってくるのです。


胃はどうして溶けない?

 胃酸をビーカーに入れて亜鉛を落とすと、激しい泡を立てながら溶け始めます。動物の胃の一部を入れると、数時間後にはボロボロになってしまうほどの強い酸性の液体、それが胃酸です。私たちの胃もたんばく質でできているのですから、これぼど強い酸性の液体とペプシンの攻撃を受ければ、同じようにボロボロに溶けてしまっても不思議ではありません。ところが、胃は溶けるどころか、どんな食べものが人ってきても見事に消化して、死ぬまで働き続けてくれます。
 なぜ、胃は食べ物を溶かして胃自体を溶かさないのでしょう。それは、胃の粘膜をおおうように分泌する粘液のおかげです。食べものが胃に入って胃液が分泌されると同時に、粘液細胞からは多量の粘液が分泌され、胃液から胃壁を守るバリアを張り巡らせます。粘液はまるで細かいネットのように消化液をからめとり、胃壁に直按触れないように保護してくれるのです。こうして、胃壁に接するあたりでは酸性から中性になり、胃壁は消化されることから免れるわけです。また、血液の循環も、粘液を十分に分泌させるために欠かせない要素です。血液循環が悪くなったり、血液が酸素不足に陥ると、粘液細胞は栄養不足になって働きが悪くなってしまいます。胃とは、つねに胃粘膜を荒らぞうとしている「攻撃因子」と、胃粘膜を守る「防御因子」のバランスの上に成り立っている微妙な臓器だということができます。


胸やけ、ゲップ、重い、痛い・・・・・。

 これほど巧妙にできた粘液のバリアも、ときとして破られることがあります。たとえば、なんらかの影響で粘液の分泌が少なくなったとします。すると、胃液は裸になった胃の粘膜に攻撃を開始し、その部分は鬱血状態になってきます。胃液の分泌が多くなりすぎても同じような結果をもたらします。
 つまり、胸やけ、げっぷ、重い、痛い、吐き気などのさまざまな胃の不快感は、胃の中で保たれていた攻撃因子と防御因子の巧妙なバランスが崩れたときに起きてくるのです。   
 それに、ひと昔前までは、強い酸性である胃の中には、どのような細菌も模むことはできないというのが定説でしたが、この過酷な状況の中でも生存して胃粘膜を傷つけるピロリ菌が発見され、胃炎や胃潰瘍に深い関係を持つこともわかりました。
日本のピロリ菌の感染者は50%以上といわれ、50代以上では60〜70%という高率で感染しているともいわれています。ピロリ菌の感染者がすべて発病するというわけではありませんがストレスが加わったり、体力が低下するなどで発病が促進されることが多いようです。


ストレスやお酒も胃を荒らす。

 さきに紹介したパーモント医師の実験によると、患者が怒ると胃壁の表面がみるみる青ざめ、消化に要する時間は機嫌のよいときに比べて2倍もかかつたということです。この”青ざめる”というのは文学的な表現のように思いがちですが、実は根拠があります。
 身体にストレスが加わると、その刺激は自律神経の中枢である視床下部に伝わります。このとき、ストレスの刺激が自律神経の交感神経に伝わると、血管が収縮して胃粘膜の血流量が少なくなり、粘液の分泌も滅ってきます。つまり、防御因子が弱くなるわけです。この胃壁の貧血状態をパーモント医師は”胃壁の表面が青ざめる”と表現したのではないでしようか。
 一方、刺激が副交感神経に伝わると、胃液の分泌が盛んになり、攻撃因子が強くなります。つまり、ストレスにさらされると、最終的には防御因子が弱くなり、攻撃因子が強くなって、胃の不調をもたらすのです。
 ところで、お酒や薬も胃を荒らす原因となるのはご存じの通り。粘液のパリアは分子量の小さいアルコールや薬を楽々と通してしまうため、胃壁がむき出しになって胃酸の攻撃を受けてしまうのです。30分後には早くも鬱血が見られます。


安易に胃薬を飲んでもいいのか。

 胃に不快感があると、つい胃薬に頼りたくなってきます。でも、この胃薬というもの、いったいどのようなブロセスで不快感を治してくれるのでしょうか。また、長期間飲み統けていても大丈夫なのでしょうか。
胃薬には、重曹を主成分としたものや最新のH2ブロッカーを配合したもののなどがあります。重曹を主成分とするものは、重曹の制酸作用によって胃酸を中和し、メントールや漢方生薬などが相乗的に働いて胃の不快感をすっきりとさせます。
 一方のH2ブロッカー配合のものは、胃酸の分泌に関与するヒスタミンのレセブター(受容体)をプロック(遮断)し、強力に胃酸の分泌を抑制します。効き目からいえば、H2プロッカー配合の胃薬のぽうが強力でスピーディーで、この薬によって胃炎や胃演瘍の90%が治るといわれています。しかし、先頃まで医師の指導のもとに使われていた薬ですから、用法・用量を無視したり、自分の判断で長期間服用をすることは絶対にやめましょう。
 なぜかというと、人間の身体には、生理的な性質を一定に保とうとするホメオスタシス(生体恒常性維持機能)という能力が備わっていて、薬で胃酸が抑えられ続けるると、”消化のための胃酸が足りない”と判断して、ますます胃酸を作り出そうという方向に働き始めてしまうのです。そうなると胃酸と薬の追いかけっこになり、薬なしではいられないことになってしまいます。
 もちろん、不快な症状を緩和するために薬の果たす役割は大きいものがあり、ピロリ菌に対しても有効な薬が開発されています。とはいえ、安易に薬に頼りすぎるのは考え物。生活スタイルを見直したり、体質を改善することで、根本から胃の不快感を解消することが必要ではないでしようか。


胃を守るためのライフスタイル。

 胃は、繊細でありながら、驚くほどタフな臓器です。それに、自分で自分を消化してしまうという危険性をつねにはらみながら、すばらしい修復力を発揮してくれる臓器でもあります。「胃の不快感は現代人の宿命」とあきらめて不規則な生活を統けていれば、単なる胃炎から胃清瘍ヘ、そしてがんの発生という経過をたどることにもなりかねません。薬は傷を治すことはでぎても、原因を取り除くことはできないのですから、生活のあらゆる面での見直しをはかって、ストレスに負けない丈夫な胃を作りましょう。

*朝食抜きは禁物。規則的に食べよう。
 胃は一定のリズムで活動をしていますので、朝食や昼食を抜いたりすると、ぜん動運動や胃液の分泌に変調をきたしてきます。とくに、胃粘膜の防御因子が弱くなっているところに食事を抜くと、胃の中が空っぼになって自己消化が起こってくることもあります。胃のリズムを乱さないように、規則正しく食べるようにしましょう。

*消化のよい料埋を食べよう。
 消化がよいということは、胃の中に食べものがとどまる時間が短いということですから、それだけ、胃にかかる負担が小さくなります。食材の選び方や調理法に配慮して、胃にやさしい食生活を心がけましょう。ただし、いくら消化がよいものでも、かまずに飲み込んだのでは、かえって逆効果です。

*お酒、たばこ、刺激物は胃の大敵。
 アルコールが胃の粘膜をむき出しにすることは前に述べましたが、それに加えて胃液の分泌を高めることもわかっています。まさに、ダブルパンチというわけです。また、たぱこは血行を悪くして粘膜の防御因子を弱くしますし、コーヒーや炭酸飲料、香辛料なども胃に刺激を与えます。とくに、お酒を飲みながらたばこを吸うという行為は絶対にやめましょう。

*胃の機能を高めるビタミンをとろう。
 胃の粘膜細胞の代謝を促し、粘液の分泌を活発にする働きを持つのがビタミンAです。また、ビタミンCにはストレスに対抗する作用があり、Eには胃壁の血流量を多くする働きがあります。これらのビタミンの相乗作用で、胃粘膜を丈夫にしましょう。